四季折々

体験した作品の備忘録

ウォッチメン

 暇すぎて映画借りてきた第一弾、ウォッチメン。前にも一回見たんだけど、また借りてしまった。実際のアメリカの出来事知らないとわからないネタが多くて解説サイト参考に見たなぁ…
 この作品はアメコミながら、登場するヒーロは一人を除きあくまで常人より鍛えられただけの人間であり、決して特別な能力は持っていない。まして正義の体現者でもなく、本当にただ仮装しただけの人間である。しかしたった一人、事故により生まれた本当の超人、Dr.マンハッタンの存在により現実とは少し違った歴史をたどった世界が舞台となる
 作中の時代は米ソ冷戦のピーク時であり、Dr.マンハッタンの存在に一層危機感を募らせたソ連側は数万以上の核弾頭を準備、それに応じてアメリカも軍備増強と悪循環が加速されている。そんな中、政府公認のヒーロであったコメディアンが殺されたことから映画は始まる
 こう書くとDr.マンハッタンが主人公のようだが、実際はロールシャッハテストの模様がうごめくマスクをかぶったヒーロ、ロールシャッハが主人公である。コメディアン殺害事件をヒーロ狩りとにらみ独自に捜査を進めるうちに、とんでもなく巨大な企みに相対し…という話
 主人公でありながらロールシャッハはあくまで常人であり、作中の展開にはほとんど影響を及ぼさない。この作品のストーリィの中枢は世界一賢い男と称されるヒーロ、オジマンディウスの計画と、その計画の根本であり、作中世界そのものを左右する力を持つDr.マンハッタンである。彼のために米ソ冷戦は激化し、オジマンディウスの計画とDr.マンハッタンの理解により世界は平和になる。ロールシャッハはこうした世界でただただ自身の正義を貫く存在である。しかしこの正義の貫き方が半端ではなく、文字通り神にだってNOを突きつけた人間なのである
 この作品の黒幕ともいえるオジマンディウスの計画により、「数百万の犠牲のもとに数億人が平和」に暮らすことが可能になった。Dr.マンハッタンの力を再現する装置を発明し、各国の首都にその力を用いた爆弾を投下。それをDr.マンハッタンの仕業であると思わせることによって、巨大な敵を前にした米ソを含む各国は敵対することをやめ、協力して立ち向かうという計画である。Dr.マンハッタンも最初はオジマンディウスに怒りをあらわにしていたが、実行してしまった以上このまま黙って見過ごすことが世界平和のためだと最終的に理解を示す。しかしロールシャッハだけは真実を明らかにするべきだと抵抗。もし真実を明かせば数百万の犠牲が無駄となり、再び世界は核の恐怖に怯えることになると言われても、絶対に妥協はしないと言い張る。そして、世界平和の維持のため、Dr.マンハッタンはロールシャッハと対峙する
 わかりやすい勧善懲悪ではないし、見終わってスカッとするわけでもないけど、面白かったと思える作品であった。物語の結末は彼が書き記し続け、最後の対決の前に投稿した手記が新聞社の読者の手紙箱から読まれるであろうところで終わるが、この後この手記が世界中に公表され再び世界は対立してしまうのか、それとも狂人の妄想とゴミ箱に投げ捨てられるのか、いずれにせよたとえ世界が破滅することになろうと自身を貫くロールシャッハも、形は違えど超人なのではないだろうか(ってwikiに書いてあってなるほどと思った)