四季折々

体験した作品の備忘録

KUBO/クボ 二本の弦の秘密

 前日まで全く知らない映画だったけど、ツイッターの感想で興味をもって視聴。確かにこれは映画館で見るべき、見てよかった映画だった
 あらすじとしては、主人公のクボは三味線で紙を組み立て操る能力を持った少年で、街に降りてはその能力で物語を披露し、母と二人で暮らしている。ある事件で心の壊れた母は、日中は人形のように座っているが、夜になると正気を取り戻し、クボに自身たちを追い詰めた月の帝と、それに立ち向かったクボの父親、半蔵の物語を披露するが、心が壊れつつある影響で記憶が朧気になり、クボに半蔵の話をきちんと聞かせてあげることができない。そんな中、街で行われるお祭りの夜、灯篭を掲げ語り掛けると死人と会話できると聞いたクボは、母親から絶対に夜は外に出てはいけないという言いつけを忘れてしまうほど、灯篭の前で父親に語り掛け続けてしまい、気が付けば夜になっていた。そこに月の帝の一派がクボをさらうために現れる。追い詰めれたクボは母親の必死の力で何とか逃げおおせ、追いつかれる前に月の帝に対抗しうる三種の武具を探しに行く…というもの
 独特のキャラ造形で最初はちょっと違和感があったけど、しばらくするとすっかり慣れて逆に愛嬌があるように見えてきた。いわゆるアニメ絵とは全然違うのだけれど、ストップアニメーションと言って人形を実際に動かしてパラパラ漫画のように映しているのだとか。一週間かけて3.3秒分のシーンしか撮れなかったとの記述に驚き。しかしだからと言って劇中の動きが大人しいかというとそんなことはなく、戦闘シーンなど動きの必要な場面ではこれでもかというほど動き回っていた。船上での月の帝一派対猿とクワガタとか
 何といってもこの作品映像がものすごく綺麗。何気ない風景すら和風の暖かさを持った美しさがあり、逆に月の帝一派の現れるシーンではぞっとするような冷たさを表現していた。紅葉をくみ上げて作った船や半蔵の城への道中などが思い出深い。その中でもとりわけ序盤の灯篭の明かりが消え去り月の帝一派登場からの母親が駆けつけて三味線をとるまでの流れは本当に涙ぐむほど美しいシーンで、この時点で来てよかったと心から思えた
 終盤3種の武具をそろえて月の帝に立ち向かうシーンも、今までろくに刀振ったことないのに戦えるのかとか思ってたけど、刀もろとも吹き飛ばされたクボが御守りとして身に着けていた母親の遺髪、父親の弓の弦、そして自身の髪留めの3本を弦とした三味線を携えて改めて向き合い、武力ではなく心の強さで月の帝に打ち勝っていて、かなり好きだった。タイトルの弦の秘密はたぶんここにかかっているんだろう
 ストーリー自体は王道かつご都合主義だったりする場面も多いけど、そんなの全く気にならないぐらい晴れ晴れした気持ちになる作品で、映像音楽ともに映画館で見てこそといった部分が大きい。来てよかったと心から思えた