四季折々

体験した作品の備忘録

来る

 ホラー映画を劇場で見たことないなと思ってふらっと視聴。松たか子パンチなるワードしか知らないレベルに前知識なく見たのだけど、実に濃い内容だった

1.結局アレってなんだったのか
見る前はホラーものなら幽霊だろとか思ってたんだけど、作中でやることがあきらかに妖怪や物の怪レベルに広範囲で破壊力が高い。日本中から集まる霊能者の半数が到着前に殺され、なんとかたどり着いたもう半分も儀式の最中に全滅。結局琴子1人生死不明。対物も地割れを起こし舞台を粉砕、建物に亀裂を入れるなど尋常じゃない。おまけに出てくる霊能力者が正体はわからんけど対処はわかるよ!だったので最後までわからずじまい。子供の幽霊が走り回るビジョンを見せたり、チサに危害を加えず大人だけ殺すのに加えて、捨て子や水に流される赤子の光景から察するに子供たちの怨霊なのか
2.なんでヒデキ夫妻は殺されてマコトと野崎は生き残ったのか
最初は子供にひどい扱いをしたかどうかかと思った。ヒデキは言うまでもないし、カナもしばらくは頑張ってたけど結局最後は津田と不倫してチサに声を荒げたりして、子供から逃げてしまった。ただそうなると死ぬちょっと前に今までを悔いて改心したのは評価してもらえなかったのかと思う。あとなんでアレがカナの母親の形を借りて出てきたのかもわからん。なにやり子供にひどい扱いをしたかどうかなら、愛せる自信がないから中絶を強要した野崎とか真っ先に殺されそうものなのだけど。あくまでチサに対しての言動で判定されるのかと思ったが、全く無関係のナースが見かけて声をかけただけで殺されたりとこれもうわかんねぇな。基本殺すけどチサに優しい人だけは生き残れるのかもしれない
マコトが初めてヒデキと出会った時に、対処として奥さんと娘さんを大事にしてとアドバイスしていて、もしそれが正しいのであれば、そうせずに霊能者が手を出してしまったことがかえって怒らせてしまい、被害が拡大したのかもしれない。作中の霊能者が皆いいキャラしていて、右腕切り落とされたのに後日再び立ち向かい死んだお婆さんとか、他の霊能者が道中に命を落としたのを悟りばらばらに行動して誰かたどり着こうとか言い出す爺さんたちとかすごくベテランって感じでかっこいいので、それがあっけなくやられてしまうあたりがまた恐ろしい
3.あの虫なに
作中最初から最後までアレの前触れとして現れ続けた芋虫。琴子曰くアレを現世へ導くラインの役割らしいのだけど、同時に弱い人間の中から吐き出されたりと、アレを象徴するマーカーとなっている。が、そもそもなんで芋虫?作中で虫がでる場面といえば、冒頭と野崎と琴子がベンチで会話するシーンぐらいで、そこでは子供たちは虫を殺して死に触れたがる好奇心があるみたいな話をしていた
4.津田は何者
背中に傷があったことと、終盤で変死してることから、アレに狙われていたのは間違いないだろうけど、その割にアレをカナの家へ誘導するお札を遺影に供えたりとどう言う役回りだったのかいまいちわからず。なんで狙われてたかもわからん

他にも細々と悩む点や記憶に残るシーンはあるけれどキリがない。すっきりしない悩みではなく、あれはどういう意味を込めた描写だったんだろうかという楽しい悩みなのでよい。映画見終わってからこんなにいろいろ考えるのも久々なので、やっぱり映画っていいなと思える作品だった。難しいこと抜きにしても、ホラー描写!現代の痛みを抱える大人たち!道路封鎖して宗教ごちゃ混ぜお祓いショー!と見所さん満載最初から最後まで不穏で濃厚な時間を楽しめる、とてもよい映画だった。他の人の感想や考察も読みたくなる