四季折々

体験した作品の備忘録

DDLC DokiDoki Literature Club! Natsukiルート

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 ずっと昔に遊び終わって、感想まとめようと思ってる間にすっかり時間がたってしまったので当時書きなぐったメモを忘れないよう再構成。何万字もだらだら書いてある上に気が付いたことを逐次書いていたせいで見返すと我ながら読みづらいし時系列ぐちゃぐちゃで気持ち悪かったので、各ルートと周回で大雑把に分ける

 ナツキ
 ちびでピンクで強気で傲岸な言い回しと絵にかいたようなツンデレキャラ。実際は常に不安で弱気な自分を隠すための防御手段だったので、自分と同じ感性で詩を書き、自分を認めてくれる主人公にあっさり惚れる。マンガ趣味を誰にも認めてもらえず、文芸部以外には友達がいなく、父親には虐待されると4人の中でもけっこうリアルな闇を抱えている。他3人がアレな面を見せつけ過ぎるせいもあって、作中屈指の友人思いかつ常識人枠な印象
 
 各章ごとに詩を作り、その結果ルートが決まるのだけど、wiki読まないと狙うの無理なレベルで喜ばれる単語が予想できない。適当に選んだ結果ナツキに喜ばれたので1週目はナツキに。
 2日目、部室に行くとマンガ棚がモニカにぐちゃぐちゃにされてたとかで怒るナツキ。主人公がマンガを否定もしないけど今まで興味を持ったことも無いと聞いて、じゃあ読んでみろと二人並んでマンガを読む。出会って2日で距離ちっか。イベント後また皆で詩を見せ合う。モニカに見せるとずるしてない?と聞かれる。この時は何も思わず。ナツキに喜ばれる内容なので当然ナツキに気に入られるが、逆にユリからはいまいちな反応。ナツキは変な技巧や迂遠な言い回しを嫌い、読みやすく美しい表現を好むのに対しユリは真逆のタイプなので、あちら立てればこちら立たずといったところ。で、二人が詩についてヒートアップしてしまい、最終的に主人公はどっちがいいかと聞きだす。ナツキルートなので当然ナツキを選ぶとショックを受けた様子のユリ。サヨリのとりなしでなんとか収まるも、彼女曰く今までこんな喧嘩をしたことはなかったのだとか
 3日目、マンガが手の届かないところにあるとかで台の上でふらふらしながら手を伸ばすも届かないナツキ。見かねた主人公が代わろうと申し出るも、むきになったのか大きな椅子を持ち込み、椅子を押さえているように言うナツキ。が、角度的にパンツ見えるじゃんと椅子の上で暴れたせいで盛大にこけて、マンガが傷物になってしまい涙目に。しかしその後は主人公と一緒にマンガを読むうちにすっかり機嫌もよくなる。なつくのはっや。その後詩を見せ合う。連日のアピールでナツキはすっかりやられてしまう。モニカからはナツキはよくない、あなたは賢いから正しい選択をしてくれると信じているとか言われる。ここでなにいってだこいつとなる。ユリは昨日の騒動もありすっかりふさぎこんでしまい、どうせ私の詩なんて気に入らないだろと見せてもくれない。帰り道、サヨリからもしナツキが一緒に帰ろうと言ってたらどっちを選ぶか聞かれる。ナツキと答えると微妙な空気に
 4日目、サヨリが目に見えて様子がおかしいので話しかけるも何でもないの一点張り。モニカに助けを求めると、快く引き受け、二人で何か話している。ナツキも相談に乗ってくれた。その後はまた詩の時間。もうこの段階だと二人でラブレター見せ合ってるような空気になる。サヨリは詩を読むとやけにハイテンションに具合が悪いから早退します!ときた。これは主人公に惚れてたとかそういうあれだったのか。詩を見せ合った後、学園祭に向けた準備を行うことに。各自別の事をして、主人公は誰かを手伝ってねとのことだったのでナツキを選択。カップケーキ作りとのことでナツキの家に行こうとしたら男連れ込んだらパパに殺されるわと返され主人公宅でやることに。冗談めかして言うからわかりづらいけど、本当に虐待されてる子が言うと重い
 5日目、ナツキが訪ねてくる前にどうしてもサヨリのことが気になるのでサヨリ宅を訪問。ここで、サヨリは実は重いうつ病にかかっていること、自分は無価値だけど主人公には楽しく生きてほしくて精一杯明るくふるまっていたこと、主人公に自分以外の友達と居場所を作ってほしくて文芸部に誘ったけど、自分以外の誰かと仲良くなる主人公を見て苦しくなったことを告白。なんだかんだ幼馴染ということでサヨリを大切に思っている主人公はそれを受け入れ、学園祭は二人で過ごそう、君が大切だとサヨリルートかこれと思うような返事をする。ナツキとの約束の時間がきて、サヨリを置いていくのが躊躇われた主人公は3人でやろうと誘うも断られたのでナツキと予定通り二人で開始。サヨリの事引きずって暗くなるかと思ったらめっちゃいちゃついてて笑う。しかしこの前後の会話でもパパがご飯作ってくれるときは出来るだけたくさん食べないといけない。ほんとは帰りたくない。できればもっとここにいたかったと裏を知っていると聞き流せないセリフを連発。初見時は重く受け止めず聞き流してた。
 準備が終わり、ナツキが帰る間際に二人の距離が急接近するも、偶然サヨリに見られてしまう。タイミング最悪か。恥ずかしくなってそそくさと帰るナツキとそれどころではない主人公。主人公が楽しそうにして、友達が出来ることが自分にとって唯一の大事なことであると涙ぐみながら言うが、うれし涙ではなく、とてもつらく苦しい気持ちになってしまう。
 この辺でwikiの攻略に従って一旦データ消去して1週目をサヨリルートでやり直す。後日再度1週目ナツキルートやり直したけど、1週目サヨリルートとほぼ変わらなかった
 ゲームの性質上しょうがないんだけど、ナツキとひたすらいちゃこらする平穏なルートが欲しいと思うぐらい気に入るキャラだった

ナツキの詩
全体的に一読しただけでだいたい意味が分かるように作られている。凝った表現をせず、言いたいことを平易な言い方で書いているが、韻を踏んだりと美しく読ませるための技術は使っているのだとか。なので、上辺だけ読んで可愛い詩だとか言われるのがかなり気に食わないらしい
1.Eagles Can Fly
出来ることをするしかないという詩かと思ってたけど、諦めの詩という解釈が主流らしい
2.Amy Likes Spiders
素敵な子だけど趣味が気持ち悪いから仲良くなんてできないという詩。ナツキの主張は逆で、気持ち悪かろうが他人に迷惑かけたり傷つけたりしないなら勝手でしょというもの。多分自身のマンガ趣味の事
3.Because you
弱く不安を隠した自分だけど、あなたがいてくれるなら強く、確かでいられる。明らかに主人公への直球なラブレター。
3.(他ルート)I’ll Be Your Beach
不安、悩み、恐れや重い気分全部まとめて私が洗い流してあげるから、また自分を愛して、素敵なあなたになってといった感じの、ユリへ送る詩。2つ目の詩でお互いに同じことについて書いたことに気付き、ユリの提案でユリが思いついたテーマについてお互い書いたらしい。作中で一番好きな詩。内容も形も非常に美しい
3.(2週目)ユリとナツキが変だと感じたナツキからのメッセージ。詩ではない
普段のユリはもっと礼儀正しく親切な子だけど、最近おかしい。直接言っても聞かないけど、主人公からなら聞くだろうから、なんとか精神科なりなんなりに行くよう説得して。モニカもなんかやばいからこのメモのことばれないようにして!
ユリと友達になりたいと思っていたナツキは、まだユリを救いたい、元の彼女に戻したいと思って主人公に助けを求めている。健気だ…他2人の異常さが際立つ中、ナツキだけが救い。だからこそ直後にモニカにばれたときプレイヤーが絶望する

ナオミとカナコ

 大手デパートの営業を務めるナオミは彼氏もいなく、友人もほとんどいない状況でつまらない仕事を毎日こなす灰色の日々を送っていた。そんな中数少ない友人の1人であるカナコがDVに苦しめられていることを知った。自身の両親もDVを行っているのを間近で見ていたナオミは早々に離婚したほうがいいと何度も促すが、恐怖でふんぎりがつかないカナコ。歯がゆく思っていたナオミはある日業務で関わった中国人の明美のしたたかさやたくましさに影響され、カナコの夫を“排除”することを思いつく…といったお話
 この作品は表題通りナオミとカナコが主人公。前半のナオミパートで状況説明から実際に夫を殺害して隠ぺいするところまで。後半のカナコパートで少しずつ不審な点を突かれ追い詰められていく
 発端こそDVだが本筋は完全犯罪の計画と追い詰められてからの逃亡シーンのサスペンスであり、同時期に読んだ「手のひらの砂漠」もDV、夫の殺害と抜き出すと共通してる部分もあるけど全く別物。また前半のナオミパートでは単なる暴力装置として書かれていた夫だが、カナコパートで夫の家族や職場の人間が登場することにより彼も弱さを抱えたただの人間であると幾度も描写される。終盤犯行をほぼ感づいた夫の妹の「暴力も振るったかもしれない、ひどい人間だったかもしれない。でも殺さなくてもいいじゃない!」といった趣旨のセリフにある通り、確かにDVを行うどうしようもない夫ではあったが、カナコが決意して離婚等正規の手段に頼れば、ナオミとカナコにはまた違う未来もあったかもしれない
 本作の真骨頂は何と言っても最後の逃亡シーン。数々の偶然や必然から事実上犯行が完全に見抜かれ、任意同行という形で警察に連れていかれたカナコは、ナオミの機転と明美の協力で一時帰宅することができたが、翌朝再び署へ行かなくてはならない。逮捕まで秒読みという状況でナオミとカナコは国外への逃亡を決意する。しかし逃亡を事前に想定していた夫の妹と私立探偵が待ち構えていた。二人は追跡を振り切り空港までたどり着けるか…という展開。最後の最後までどちらに転ぶか予想できなかったので、ラスト数行まで文字通り息もつかせぬ状態。読み終わって思わず大きく息を吐いてしまった
 最初は人生に退屈していたナオミ、絶望していたカナコが夫の排除と隠ぺいという目標を持つことで不思議なほど高揚し、たくましくなっていく。特にカナコはナオミが目を見張るほどはっきりと意志をもって人生を生きていこうとする。明美が体現しているように、女性は夫に頼るだけの存在ではなく、いくらでも自分で人生を決めて切り開くことができるというのが本作のテーマなのかと思った

ARIA The BENEDIZIONE

 これで終わりなのが悲しい
 最終章は藍華と晃さんを中心に姫屋のお話。個人的には一番シナリオ好きだったかな。過去を振り返りつつ現在のお話を進めて未来へ目を向けるって一連の流れが一番自然に作られてた気がする
 前作前々作に比べて圧倒的に主役への焦点が厚く、ほとんど藍華と晃さんの過去の話で進行していったのは、60分でこの話作るならもう主役2人に絞らざるを得なかったんだろうなと納得した。晃さんがあまりに美しく男前すぎて夢小説みたいだった。実は3人娘のなかで一番こじらせて不安定と噂の藍華だけあって過去はそれに輪をかけた難しさなのに、ことごとくイケメンムーヴで心を通わせて最終的にずっと追いかけてたとまで言わしめる手腕は惚れるわこんなんってなったよ
 伝統あるゴンドラを呪いと言い捨てて受け継がないと言った序盤では最終的に考え直して受け継ぐのかなと思ってたけど、伝統を受け継いでバトンを渡すだけでいいのか、それなら私である理由はなんだと考えてしまう呪いが自分の中にあって、過去を受け継ぐのではなく自分が伝統の始まりになりたいってはっきり言いきったのがなるほどなぁと感心した。凡才で粗悪品でなんて卑下してたのが立派になってまぁと晃さんの気分だった。アリシアさんに憧れてウンディーネを目指したけど、晃さんを師匠に持つことができたのが本当に大きな幸運だったし、晃さん自身も救われたんだろうな
 お約束のタイトル表示、お約束の会話、そして全編通してシリアスを含めつつも優しく暖かな世界と、ARIAとは何かを外れないよう細心の注意を払ったんだろうなぁと思わせる素敵な作品だった。エンディングロールの1期からの映像振り返りつつウンディーネ流すのは反則だよこんなの感動するに決まってんだろみたいな謎のハイテンションで感無量だった
 いつまでもこの世界に浸っていたかったなぁ…やっぱり最後の最後にARIAカンパニー編やったりしません?

ARIA The CREPUSCOLO

 ARIAがまたしても映画化ということでえんやこらと映画館へ。クソカッペランドゆえ扱ってる映画館自体少ないから遠いんじゃ
 平日の夕方だからか人は数人ほど。周囲の物音気にせず集中できたのはよかったけど、売り上げ自体が低いのならいやだなぁ
 映画自体は前作同様、映画特別というよりは本編の延長のようなお話。アテナさんとアリスちゃんの関係に主眼を置いていたため、ついにアテナさんに新声優がついた
 始まった瞬間広がる風景とBGMであぁこれだこれと顔がほころんで、昔に戻ったかのようないつもの掛け合いとギャグ顔、そして未来に進んだからできるお話と展開。期待していたものがしっかり描かれていて大満足だった
 残り2社のお話もこんな風に見たいなぁ…と思っていたらスタッフロール後に新映画の宣伝が!この時は思わず身を乗り出しかけた。前作はアリアカンパニーというよりはARIA自体をテーマにしていたので、これは次作姫屋のあとに最終作のアリアカンパニー編が待っているということでよろしいか…?どちらにせよまだまだ展開があるというのは非常に楽しみだ
 今回のOPEDは牧野さんは担当されなかったが、特にEDのechoesがめちゃくちゃ好みドストライクですっかり聞き入ってしまった。フルでしっとり聞きたい
 特典のコースターは灯里とアイちゃん。これだったら特にうれしいなと思っていたから最後まで大満足だった

オールド・ボーイ(韓国)

 "私は獣にも劣る人間ですが、生きる権利はあるんじゃありませんか?"
 テーマは過去の罪と復讐
 オデスは娘の誕生日の夜、突然拉致監禁される。事情も何も分からずただただ過ぎていく時間の中、いつか脱出し復讐するため、備え付けのテレビで教養を深め、体を鍛えていたが、15年後、突然解放される。何故15年も監禁されたのか、誰がやったのか、真意を確かめ復讐するためにオデスはさまよう…というはじまり
 解放された夜ミドという女性と知り合い、二人でいろいろ調べていると、あっさり姿を現した首謀者のウジン。オデスは真意を知るためにあえて殺さずに過去をさかのぼり、やがて過去に犯した罪を思い出す
 学生の頃、オデスはウジンが姉と近親相姦しているのを覗き見てしまう。そしてそれを友人につい話してしまった。誰にも言うなとくぎは刺したが、誰ともなく話は広まり、尾ひれがつき、ウジンの姉はウジンの子を妊娠したとまで言われてしまい、姉は気を病み、自殺してしまう
 姉はお前の舌に想像妊娠させられて自殺したと語るウジン。だが15年閉じ込めたこと自体は復讐ではなかった。お前はなぜ15年監禁したかではなく、なぜ15年後に解放したかを聞くべきだったとウジンは笑う
 ウジンの復讐は、自分と同じ真似をオデスにさせること。催眠術によってオデスとミドは互いに愛し合うように仕向けられていた。そしてミドは大人へと成長した、オデスの娘であった。その事実を知り発狂するオデスであったが、ミドが今まさにその事実を知らされようとしていると知り、這いつくばり靴をなめ、舌を切り、ウジンに決して言わないでくれと懇願する。復讐を果たし笑うウジンだったが、ミドへ告げるなと命じた後、復讐を果たした今俺は何のために生きればいいと自殺する
 その後、どこか雪山でオデスは催眠術師に過去の忌まわしい記憶をすべて消すよう依頼する。冒頭の一文に心を動かされたと催眠術師は依頼を受ける。倒れ伏すオデスを見つけたミドが抱き起し、愛してると告げると、オデスは泣いているような、笑っているような表情になり終わり
 作品全体にまとわりつく生々しさと気持ち悪さに圧倒される。雰囲気がおぞましい。生きたものが食いたいと言って生ダコを踊り食いしたりするシーンや、双方ふらふらによろけながら喧嘩をしたりとか、そういったスタイリッシュな復讐とは程遠い描写はそもそもこの作品が主人公が敵に復讐するといった一本道の作品ではないことを支えているような気がする。また、オデスは口数が多すぎるというウジンの言葉など、後からそういう意味だったのかとわかる描写が上手く織り込まれていた
 一方作品として見やすくないのがちょっと引っかかった。序盤の興味を持たせる始まり方から解放まではひきつけられたが、そこから終盤ウジンと直接対峙するシーンまでの間はどうも見づらい。過去の自分の犯した罪を現在の自分が追いかけ、追想するシーン(過去の自分の行動を現在の自分が見失ってしまう=罪を覚えてすらいない)の描写はよかったけど、それ以外はシーンを並べて進めたような構成で、シーンとシーンのつなぎが断絶していたように思えた
 あとこれは好みによるんだろうけど、催眠術というある種フィクションの禁じ手のような技でこれまでの行動と復讐、そして結末を説明したのが好きじゃなかった。でも催眠術を持ちだしてからのお前が過去の罪を忘れたのは催眠術なんかじゃなく、単にそれが他人事だったからだという流れはよかった
 結末についてはどうなんだろうか…結局過去を捨ててミドと生きていくというのは、ウジンが最後に語った、俺たちは覚悟をもって愛し合っていたがお前はどうかなという復讐から逃げてしまったように思える。事実を告げず姿を消すか、あるいは事実を胸にしまい一生罪と向かい合って生きていくか、そういった覚悟のようなものもなく、罪を消してしまうのも一つの解答なんだろうか
 あまり万人に面白いよと勧められる作品ではなかったけど、陰鬱で生々しく救われないという作風を受け入れられるなら、見るべきところの多い作品だった。復讐する側だったはずの主人公が実は復讐される側だったというどんでん返しのラスト30分や、過去の罪というテーマがよかった

復活の日

 なんとなく目に入って視聴したらある意味タイムリィな作品?
部隊は米ソ冷戦期1980年代。細菌兵器として作成されたMM88が事故により世界中に蔓延。これはあらゆるウィルスの毒性を強化し、風邪ですら致死の病となる驚異の兵器であり、人類はわずか数ヶ月でほぼ全滅した。しかしこの細菌兵器が零度以下では活動停止するという特性により、南極にいた各国の調査隊のみは感染することなく生き延びていた
 空気中のウィルスを採取してワクチン製造を試みるなど、再び南極の外へ出る方法を模索する調査隊であったが、地震予知の研究をするヨシズミによって、ワシントンにM8.5~9レベルの地震がおそらく起きると発覚。仮に地震が起きればアメリカの自動核報復装置が誤作動→ソ連の報復装置が作動→南極の基地も秘密研究施設と疑ってたので対象となり核攻撃により全滅することになり、それを阻止するべくヨシズミとカーターの2人はウィルスの中決死の覚悟で突入する…というお話
 最初はウィルスをどうこうして人類再建かと思っていたのに物語開始時で南極の八百数十人を残して全滅なので恐れ入る。しかも全滅するまでの世界中の暴動や病院の大パニック、死体焼却に戒厳令と徹底的に克明に描かれているので現実のコロナウィルスを思わせることも相まって気が滅入ることこの上ない。ヨシズミの恋人が友人の家を訪ねてからの流れとか陰鬱すぎてしばらく視聴中断した
 反面、後半のミサイル発射阻止のパートからはなんかぐだぐだというか行き当たりばったりというか、ツッコミどころが多かった。そもそも軍事施設入り込んで発射阻止の操作しないといけない時点で行くべきは米国の軍人だろうに、なんでカーターの助手がヨシズミなんだ。や、主人公としてヨシズミが主軸だからキャストとしてはわかるんだけど、そこに作中の説得力を持たせてくれよと。案の定カーターが不慮の事故で動けなくなったために、何すればいいかわからないヨシズミがパネルの前でわたわたしてたらミサイル発射されてしまった。ここほんとにえぇ…ってなった。発射阻止して人類はまた歩んで行けるんだってオチかと思ったら二度目の全滅となったって字幕入ったからね。復活しろよ
 あと南極外の人類はワクチンの作り方がまったくわからなくて死滅するんだけど、南極の博士は採取して1ヵ月足らずで効果は保証できないとか言いつつ完璧なワクチン作成しちゃうんですよ。上陸直前に注射してばっちり生き残れるぐらい完璧。放射能当てたら出来たわとか言ってたけど、少なくとも南極の基地レベルの施設で1人で出来るものを世界中の研究者は誰一人作れなかったのか…?と疑問に思った
 結局一人になってしまったヨシズミは、万が一に備えて基地から避難させられた人々を探して南へ歩き続ける旅に出る。ここはとにかく切実で背景の広大さと人の小ささとBGMの美しさが一体となって、何とも言えないはかなさを感じた
 物語はわずかな集落レベルになってしまった避難民の中のヒロインとヨシズミが再開して終わり。うん、これもまぁ美しいっちゃ美しいんだけど、真っ先に出た感想は復活できてねーじゃねーか!だった。老若男女合わせて30人弱じゃもう絶滅を待つばかりじゃないか…
 感想としては、全体的には間違いなく面白い。2時間半ぐらいあったけどほぼノンストップで見るぐらい力強さと魅力がある。こまごましたエピソードや人間関係省いちゃったけど、メインシナリオをどっしり支えて引き立てる濃密な展開が続くんですよ。あと風景がいい。雄大な海や生き物を存分に映し、作品の空気をより一層味わい深くしている。それだけに後半の展開が個人的に惜しい。同じ阻止失敗でも本編のはもうちょっとやりようあっただろとツッコんでしまうので、あぁ失敗したという絶望感ではなくえぇ…という呆れが先に来てしまった。あとはやっぱり、希望のある終わり方が見たかった。タイトル通り復活を予見させるようなオチにしてくれればもっとすっきりした気持ちでエンディング見られたんじゃないかなぁ…このあたりは完全に好みだろうけど

来る

 ホラー映画を劇場で見たことないなと思ってふらっと視聴。松たか子パンチなるワードしか知らないレベルに前知識なく見たのだけど、実に濃い内容だった

1.結局アレってなんだったのか
見る前はホラーものなら幽霊だろとか思ってたんだけど、作中でやることがあきらかに妖怪や物の怪レベルに広範囲で破壊力が高い。日本中から集まる霊能者の半数が到着前に殺され、なんとかたどり着いたもう半分も儀式の最中に全滅。結局琴子1人生死不明。対物も地割れを起こし舞台を粉砕、建物に亀裂を入れるなど尋常じゃない。おまけに出てくる霊能力者が正体はわからんけど対処はわかるよ!だったので最後までわからずじまい。子供の幽霊が走り回るビジョンを見せたり、チサに危害を加えず大人だけ殺すのに加えて、捨て子や水に流される赤子の光景から察するに子供たちの怨霊なのか
2.なんでヒデキ夫妻は殺されてマコトと野崎は生き残ったのか
最初は子供にひどい扱いをしたかどうかかと思った。ヒデキは言うまでもないし、カナもしばらくは頑張ってたけど結局最後は津田と不倫してチサに声を荒げたりして、子供から逃げてしまった。ただそうなると死ぬちょっと前に今までを悔いて改心したのは評価してもらえなかったのかと思う。あとなんでアレがカナの母親の形を借りて出てきたのかもわからん。なにやり子供にひどい扱いをしたかどうかなら、愛せる自信がないから中絶を強要した野崎とか真っ先に殺されそうものなのだけど。あくまでチサに対しての言動で判定されるのかと思ったが、全く無関係のナースが見かけて声をかけただけで殺されたりとこれもうわかんねぇな。基本殺すけどチサに優しい人だけは生き残れるのかもしれない
マコトが初めてヒデキと出会った時に、対処として奥さんと娘さんを大事にしてとアドバイスしていて、もしそれが正しいのであれば、そうせずに霊能者が手を出してしまったことがかえって怒らせてしまい、被害が拡大したのかもしれない。作中の霊能者が皆いいキャラしていて、右腕切り落とされたのに後日再び立ち向かい死んだお婆さんとか、他の霊能者が道中に命を落としたのを悟りばらばらに行動して誰かたどり着こうとか言い出す爺さんたちとかすごくベテランって感じでかっこいいので、それがあっけなくやられてしまうあたりがまた恐ろしい
3.あの虫なに
作中最初から最後までアレの前触れとして現れ続けた芋虫。琴子曰くアレを現世へ導くラインの役割らしいのだけど、同時に弱い人間の中から吐き出されたりと、アレを象徴するマーカーとなっている。が、そもそもなんで芋虫?作中で虫がでる場面といえば、冒頭と野崎と琴子がベンチで会話するシーンぐらいで、そこでは子供たちは虫を殺して死に触れたがる好奇心があるみたいな話をしていた
4.津田は何者
背中に傷があったことと、終盤で変死してることから、アレに狙われていたのは間違いないだろうけど、その割にアレをカナの家へ誘導するお札を遺影に供えたりとどう言う役回りだったのかいまいちわからず。なんで狙われてたかもわからん

他にも細々と悩む点や記憶に残るシーンはあるけれどキリがない。すっきりしない悩みではなく、あれはどういう意味を込めた描写だったんだろうかという楽しい悩みなのでよい。映画見終わってからこんなにいろいろ考えるのも久々なので、やっぱり映画っていいなと思える作品だった。難しいこと抜きにしても、ホラー描写!現代の痛みを抱える大人たち!道路封鎖して宗教ごちゃ混ぜお祓いショー!と見所さん満載最初から最後まで不穏で濃厚な時間を楽しめる、とてもよい映画だった。他の人の感想や考察も読みたくなる